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火焔型土器

最近すっかり縄文づいていますが、約一万三千年続いた文明の社会、行動、心理、身体性、関係性、興味があります。我々が無くしてしまった身体性、非言語的なコミュニケーション、移動、空間、時間感覚、五感を超える知覚の広がりなど、現代人が失ってしまった豊かな身体性に意識がいきます。

写真は、火焔型土器です。現代のような機能美はありませんが、この全体性の中に、何か存在の在り方の基本形がありそうです。

火焔型土器は 1936 年に長岡市馬高遺跡で発掘された「火焔土器」に由来する名称で、十日町市笹山遺跡出土の火焔型土器は、縄文土器唯一の国宝となっています。火焔型土器を2020年東京オリンピック・パラリンピックの聖火台に!というプロジェクトがあるそうです。縄文的なコンテクストを世界に発信するにはいい機会だと思うので是非実現してほしいものです。

 

身体も表面的にはシンメトリーに出来ているように思われますが、全くのシンメトリーではなく、 この土器のようなバランスや全体性を感じます。それは内部に行けばいくほど、身体の全体像は整っているものというよりは、流動的な性質を感じます。この流動的なる身体を感じれば感じるほど、この土器の存在がとてもリアルに感じてしまうのは、イメージが少し深みに行き過ぎているのかもしれません。


しかし目で見えるものだけで全て考えるというのは、体を心なきものという前提で物質として見るということで、医者ではない我々ロルファーは、体を存在として、人体に相対している、そんな風に思うのです。

(ちょっと話がズレてきてしまいましたので元に戻します。)

 

 

さて、この火焔土器は、考古学者たちが炎の文様らしいとみて命名されているらしいのですが、アーティストの岡本太郎は、この土器に根源的な美をみた際に、彼が想起したものは「火炎」ではなく『深海のイメージだ』と言ってたのだそうです。

 

炎ではなく深海、海の底深く。真逆の水のイメージであるというのは、面白い話ではあるし、どういう意味で、岡本太郎がそう語ったのか、本当のところは分からないようでありますが、ボディワーカーに言わせてもらうと、深いところには、水が流れていて、この土器のように、少しカオスな文様から出来ているというのは、腑に落ちる話ではあります。

 

肉体に始まる物質的な体は、その組織を繋ぐ張力の身体が支えているわけですが、我々人間の体は、もう一つ圧力の体があって、深いところには水の流れが作り出す流れの調和が、身体の流動性やバランスや調整力、免疫力にも関係しています。


NHK特集の人体シリーズでも、やっていた通り、臓器同士や脳のコミュニケーションでは、神経系だけでなく、この流動体の水のネットワークが司っており、繋いでいます。リンパや血液などですね。

 

そんなことも含め、この火焔型土器を眺めていると、本当に飽きないし、見るたびに新しい発見があったりするのです。