I. 組織における「見えない喪失」の蓄積

 

なぜ組織論にグリーフケア(喪失の悲嘆へのケア)が必要なのか。 それは、現代の企業組織が**「絶え間ない喪失の現場」**だからです。

  • 役割の喪失: 異動、昇進、あるいはプロジェクトの終了。

  • 繋がりの喪失: 退職、チームの解散、リモートワークによる身体的共鳴の欠如。

  • ビジョンの喪失: 価値観の変化に伴う、これまでの成功体験の無効化。

これらの「小さな死」とも言える喪失に対し、組織が「前を向け」「切り替えろ」とだけ強要するとき、社員の神経系は**「未完了のグリーフ」**を抱え、システムに深刻なエラー(フリーズや回避行動)を引き起こします。

 

 

II. グリーフは「構造的安定」を奪う

 

グリーフ(悲嘆)は、心理的な問題である前に、物理的な**「重心の喪失」**です。 大切な何かを失ったとき、私たちの身体は重力に対して「踏ん張る力」を失い、AIR-COREが崩れます。

  • 組織における不安定: 心理的安全性の低い組織では、社員は常に「いつ足元を掬われるか分からない」という不安の中にあり、これが身体的には「過覚醒」や「低覚醒」の反復を生みます。

  • 物理層でのアプローチ: グリーフを「言葉」だけで癒やすのではなく、崩れた身体の重力軸を再構築(リ・アーキテクチャ)すること。それによって、人は再び「自分の足で立つ」という実感を物理的に取り戻します。

 

 

III. コンパッション・インフラとしての組織デザイン

 

上智大学などのアカデミックなグリーフケアが「個人の癒やし」に焦点を当てるのに対し、私たちの「TIC(トラウマインフォームドケア)× 組織論」は、組織全体をグリーフ(喪失)を包摂できる「安全な器」に作り変えることを目指します。

喪失を無かったことにせず、その痛みを構造的な安定(AIR-CORE)へと昇華させるプロセス。 これができる組織は、変化に強く、真の意味でのレジリエンス(復元力)を獲得します。セラピスト的な過剰な介入ではなく、物理的な「軸」と、社会的繋がりの「枠組み」を提供すること。それが、ビジネスの現場におけるグリーフケアの正体です。