【2016/10/14執筆、2026/2/27追記】
【2016年の記録】
原宿で友人と中華料理を食べていた時、ゆっくりとした足取りの小グループが入ってきた。その中に見覚えのある人がいた。ピンときた僕は、思わず彼の名前を呼びかけた。「〇〇さん!」
彼は最初、誰だかわからないような表情をしていた。しかし、僕が彼に近づき、改めて声をかけ、経緯を説明し、彼の手を取りぎゅっと握ると、
彼は、ぎゅっと握り返してくれた。
手を握った彼の顔に、笑顔が広がっていくのが印象的だった。
「ああ、テツさん!」
彼は、7月に行ったダイアログ・イン・ザ・ダーク(下記参照)でのガイドの方だった。全盲である。何かを思い出したように、手の感触から、彼は色々思い出したようで、あれこれ話し始めた。
「テツさんは…身体ですよね、ロルフィングですよね!」その他にも、あの日僕たちが3ヶ月前に話したことを細かく覚えていてくれた。
聴覚と触覚に刻み込まれた記憶というのは、本当にすごい。
僕たちはしばらく手を握り合いながら再会を喜び、言葉を交わし、
またの再会を約束して、力強く手を握り合って別れた。
本当に良い再会だった。
人と人が出会うと、何かが起こる。
それは時に、奇跡を呼ぶ。
それは、あなたが自分の体と出会った時でも同じだ。
【2026年の追記】
10年前のこのブログを読み直すことは、⛏️(つるはし)を手に、当時の記憶を深く掘り起こすような作業でした。
2016年の僕は、今よりもずっと「色々感じやすかった」時代の中にいました。 暗闇での再会に震え、そしてその翌日にスタジアムのナイトヨガでは、出会う人全員と「ぎゅっと握手」をして歩き回る。老若男女、誰かれ構わず体温を分かち合うことでしか作れない「場」があると信じて、全身のセンサーをフル稼働させていた、そんなやたらぎゅっと握手してた時代です。
あれから10年。
今の僕は、色々な場所に出没していますが、例えば今日は一般的な場所から少し離れた静かないちご農園のビニールハウスの中にいます。 出荷前の農産物に触れる貴重な機会です。
この場所での作業は、1つのハウスに3、4人。
適切な距離感と、言葉を持たない植物たちに囲まれた、静かな「場のデザイン」された空間。自分の輪郭を保てるこの時間は、最近のお気に入りで、今の身体はこの時を何より楽だと感じていますね。
なんでこのブログを思い出し追記したのかというと、
先日、緊急に呼ばれた選挙の開票会場、というガヤガヤとした、言葉が伝わらない騒音の中で、その日退勤するある方への労いを含め、帰り際の挨拶で、自然と相手の手を取り「ぎゅっ」と握手をしていました。久しぶりにしたぎゅっとした握手、その時、一瞬、ぎゅっと握手した時がシンクロして思い出しました。
頭は最近のバウンダリーというか、昔より少しよそよそしい、ソフトな関係性風な自分になっていましたが、身体は、あの10年前の熱い感触を少しも忘れてはいなかったようです。
言葉が届かない場所で、手のひらを通じて伝わる確かな何かを、僕は今でも信じているようです。
色々感じやすかったあの頃の僕と、 そして色々な場に出没している今、今日は静かなハウスで、ぎゅっとしない苺農園で働く今の僕。
この二人が10年越しに「ぎゅっと握手」をして、そしてようやく一つの身体繋がりの物語になった。
そんな気がしています。
さて、ここまで書いてもう少し追記したくなりました。
私たちはいつまでも同じ経験を繰り返していくのだろうかー。
「同じ体験を繰り返している」と思うと、人は時に足踏みしているような焦りを感じます。
でもそれは、「過去の自分との自分と、今の場所で再会している」のだと思います。
それは「繰り返し」ではなく、過去の点と今の点が結びついて、新しい線(物語)が描かれた瞬間です。
らせん階段の上の「再会」、つまり過去の自分との握手になったのではないかと思いますね。
過去と未来の握手は今の自分が作る。
なんかいいフレーズが書けたので、今日はこの辺で。。。
ダイアログ・イン・ザ・ダーク
http://www.dialoginthedark.com/
ダイアログ・イン・ザ・ダークは、暗闇という見えない世界で、視覚以外の感覚が研ぎ澄まされ、その素晴らしさや心地よさを知ることができる施設です。少人数のユニットで暗闇の中のツアーに出かけ、その道案内人は、暗闇のスペシャリストである視覚障害者の方々です。普段なかなか接する機会のない視覚障害者と私たちが、暗闇という彼らの世界に入っていくことで、稀有な出会いが生まれます。生まれて初めてのコミュニケーションが生まれるかもしれません。そして、暗闇の中に置かれた私たちの知覚は、普段とは異なる場所に降り立ち、五感を再編成していきます。ここでの体験は、私たちに新しい可能性を示唆してくれるでしょう。出会い、体感、そして自分自身。様々なことを思い、感じることでしょう。それは、参加する人それぞれにとって異なる体験となるはずです。ぜひ、あなただけのダイアログ・イン・ザ・ダークを楽しんでみてください。
お一人での参加はもちろん、友人や、最近関係がうまくいっていない彼女、夫婦、親子など、新しい関係性を築きたい方と体験するのもおすすめです。暗闇という特別な空間で生まれる、都市型のエンターテインメントです。
【追記】
当時はこんな風に、この場所の意義を言葉で説明しようとしていました。 でも今の僕にとってのダイアログ(対話)は、この説明文の中にある『エンターテインメント』という言葉よりも、あの時交わした『握手の感触』そのものの中にあります。
