心と脳

 

 

  この卵型の骨の器にしまってあるものは何?

 

  傷つきやすく狂いやすいひとつの機械?

 

  私たちはおそるおそる分解する

 

  どこにも保証書はない

 

  その美しいほほえみの奥にあるものは何?

 

  見えるものと見えないものが絡み合う魂の迷路?

 

  私たちはおずおずと踏み込む

 

  私たちは新しい道標を立てようとする

 

  誰も地図は持っていない

 

  しかもなお私たちが冒険をやめないのは何故?

 

  際限のない自問自答に我を忘れるのは?

 

  謎をかけるのは私たち自身の脳

 

  謎に答えるのも私たち自身の脳

 

  どこまでも問い続け・・・いつまでも答えはない

 

  谷川俊太郎