堕落

ヘンドリック・ホルツィウス作「人類の堕落」
ヘンドリック・ホルツィウス作「人類の堕落」

 

堕落の反対語は何だと思いますか?

僕は少し考えましたが、わかりませんでした。答えを調べてみると「向上」だそうです。堕落の意味は、物事がその本来あるべき正しい姿や価値を失うことだそうです。

 

聞いてみるとそうなんだと思う気持ちもありますが、 人間の全体性は、向上と堕落もあるニュートラルな状態をいうので、あまりに向上だけしか考えていないと少し病的になっていく気もします。

 

また反対に堕落だけしていることもなんとなく気まずくなってきます。両方ありえる人間性みたいなものを少し真面目に論じたのが坂口安吾の「堕落論」です。戦争直後に書かれた本なので、急遽的なことを論じていますが、こんな内容です。(本の紹介ではないので一部のみ転記。)

 

終戦で世相も変わり果て、戦火に花と散った若い勇士と同じ立場だった生き残りの帰還兵も闇屋になり、健気な心情で男を見送り、亡夫の位牌に額ずいていた女にもやがて新しい男ができてゆく。それは人間が変わったのでなく、元から人間とはそうしたものであり、変化したのは世の中の表層だけである。

 

人間とは元からそういうものだという発想は、今のギスギスした時代には響きます。終戦直後という究極の状態になれば、ニュートラルな人間性が出てくるのですね。向上し過ぎず、堕落し過ぎず、どっちに行き過ぎても、どっちだけでもないのが、人間の自然体なんでしょう。自分を全部使う、全体性をだす方が人間的で、人間の良さや魅力が出てくるのかも知れません。