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そよ風

先日、とある集まりで、ある著名なクリエイターの方とご一緒する機会があった。

僕が、自己紹介したところ、

 

「なるほど。それは魔法使いだね、いや、現代の陰陽師のようなものか。」と彼に言われ、「はい、そのようなものです。」とつい応えてしまった。

 

 

その文脈で話を続けた。

「それにしても正体をすぐに暴くなんて、先生も凄いですね」と返すと、

 

「僕も人生長いし、人に夢や絶望を与える仕事をしてきたので、色々な人にあって来ているから。」

 

「先生も魔法使いですか?」と聞くと、

「いやいや僕は、不思議なことや、楽しいことが好きなだけ。

これまでとんでもない連中と最高の人と一緒に仕事して来たから。ま、これから見える世界を少しだけ見せる時代の代弁者だよ。」

 

「そこまですぐに本質を掴むなんて。そんな人は初めてです。」、「大したことはやってませんが、元々は、僕もそっちの人だったんです。でも色々やって来て、今はこっち側にいます。」と返した。

 

「そっちは楽しい?」

「はい、こっちはこっちでたのしいです。」

「そっちも、楽しいですよね。」

「まあね。。。」

「次回作楽しみにしています。」

 

お酒のせいもあるけど、そっちだ、こっちだ、で、

話が通じてしまう世界は、不思議だけど、楽しい。昔のよう。

日本人の対話は、本当はこれでいいんじゃないかと、ちょっと思った。

 

そっち側の世界とこっち側の世界、

そしてまだ見ぬあっち側の世界は、

同じ現実の中に存在していて、出会いやスレ違いを繰り返している。

 

ちょっとした知覚が開くと、その二つの世界は交わり、

目の前を、ふわーっと、そよ風のような何かが通り抜ける。

そよ風は、僕を包み込み、前髪がふわーっと靡いて、

カシャッと音がして世界を切り閉じる。

 

目に映るものが、少し違って映ることに気がつく。

今まで目に入らなかったものが目に入る。 

その一瞬を視覚が捉えて、見ていた世界は変わっている。

 

それは、スマホの中にない何かを見せてくれるのだと思う。

現実の中で、違和感を感じた時は、あっち、こっちと、

いつもと違う道、たまにはイッてみても、いいかもしれません。

 

自分を切り閉じる。大切な体験だと思う。

そういう機会がないと、自分は自動運転されていて、留まることを知らない。

立ち止まれない日常が動いていく。

 

それはどこにも売ってないあなただけの体験。

唯一無二のあなたに戻る瞬間。  本当のことは、意外に身近な中にあるけど、

デジタル信号の知覚しか感じてない意識と体には、ただ感じれない、ただ見えてないだけ、かもしれません。

 

 

二軒目にいく頃、空を見上げると、お月様が出てました。

たまには、お月様もいいね。

夜のそよ風の中、月を見ながら、並木橋を渡り、プラプラ帰った。