森へ

数年前、ロスから一時帰国中の友人の希望で、渓谷ぞいの森へと出かけた。

 

現地に着くと、パラパラと雨が。確かお天気の予報ではなかったっけ?「私は雨女なの。」そう言うと、彼女は、歌いながら先を行く。渓谷は美しかった。川のすぐ横を通る歩道を上流方向へと登っていく。秋の始まり。

 

森の入り口で立ち止まり、山の神様に一礼して歩き始めた。久しぶりの山道だ。4−5時間はかかるちょっとした山歩きは久しぶりだ。

 

森に入ってしばらくはその歩いている感覚は違和感や不自然さを感じていたが、しばらく歩いていると、森の環境と同期が取れてくる。森が身体に入ってくる。森のにおいがする。川のせせらぎが耳に届く。遠くで鳥の声が何種類か聞こえる。

 

道すがら色々な話をした。ワイナリー経営の話、アメリカのスーパーマーケットやカルチャーセンターでの話、アメリカ人との人間関係の話。どれも普段耳にしない話で、興味が湧き今日はすっかり聞き役である。しかし、渓谷を登り、坂が急になってくると2人は次第に無口になってきた。呼吸の息づかいと、出てきた岩場を踏みしめる音。時々休みながら、道を進む。

ここまできたら、後には戻れない。前に進むしかない。涼しい時期だけど、少し汗をかいてきた。上着を一枚脱いで腰に巻く。

 

さらに傾斜が出てきて、ほぼ登り道となる。息が荒くなる。きつそうな表情をみて、僕は登山用のストックを1本彼女に渡した。

スキューバで潜る時は、同行者はバディと呼び、その工程が終わるまでの運命共同体で一時的に「私たち(WE)」を作る。山も同じで、山から降りてくるまでは、同行者同士協力体制になる。そして山の中で出会う人同士挨拶をする。

東京に「ダイアログインザダーク」という、聴覚障害者に暗闇を体験する施設があったが(現在休止中)、暗闇ツアーを共にするメンバー同士は、ひとときの連帯感ができる。

 

さて無事に峠を越え、バス停の方へと向かう途中、突如、目の前に大きな蛙が出て来た。まるで山の神ような大きな蛙。「お邪魔しましたー」僕らは彼に一礼をして、その日の旅を終えた。日帰り温泉経由で現実の世界へ戻る。別の時間が流れる街へと戻る。

 

今年またこの森に出かけてみようと思う。僕は基本晴れ男です。 

 

 

写真はモウドクフキヤガエル。

可愛い顔をしているが、猛毒であり、現地人の間では古くから矢毒として用いられている。毒の名はバトラコトキシン。心毒性、神経毒性を持つステロイドアルカロイドの一種である。摂取から7-19時間後から一過性の嘔吐、下痢などがある。疲労感、傾眠から重篤になると錯乱、脳圧亢進、呼吸困難、呼吸停止、頻脈、腎不全をきたす。

 

可愛い顔には気をつけよう!(?)ナンノコッチャ。