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ロルフィングとパリントニシティ

 

ロルフィングの原理原則の一つに「パリントニシティ」という概念があります。おそらく、ロルフィングにおける造語でしょう。

 

「二方向性」と訳され、身体にかかる力の向きは二方向性を持ち、動的に拮抗することでバランスが保たれるという意味で用いられます。

 

パリントニシティ的な感性を身につけると、体の使い方が一段階向上します。

 

空間の使い方や踊りの幅が広がり、空間の活用能力が高まるでしょう。

 

立っている時も、歩いている時も、もちろんこの概念は関係してきます。

 

さて、全く新しい概念かというと、そうではありません。例えば、ギリシャ時代の哲学者ヘラクレイトスは、様々な概念を残していますが、その一つに「世界の秩序と調和とは、対立するものがせめぎ合い、正反対の方向へと働く二つの力が拮抗する、逆向きに働き合う調和である」という言葉があります。

 

「逆向きに働き合う調和。人間は、どうして一なるものが、自己自身と反目しつつ、同時に、自己自身と一致するかということを理解しないのか。それは、弓や竪琴に見られるような逆向きに働き合う調和なのである。」

また、ドイツの哲学者ニーチェは『ツァラトゥストラはかく語りき』において、「深淵の上にかかる一本の綱」の箴言に例えて、このように語ります。

 

「調和とは、竪琴の上に張り渡された一本の弦なのだ。それを強く引き絞るのも危険であり、力を緩めて弛ませるのも危険であり、戦慄して、音を奏でる手を止めるのも危険である。そして、そのような闘争と緊張状態の極限において、世界全体においても、一人一人の人間の人生においても、動的な調和が存立している、と。」

 

身体においては、「正反対の方向へと働く二つの力が拮抗する、逆向きに働き合う調和」、そしてこの動的な調和のような性質。これらを「パリントニシティ」と呼んだのだと思います。

 

人間に起こることは、人間の体にも、人間の発想にも、人間の行動にも、人間が作り出したものにも、人間関係にも、全て同じように反映を繰り返していくものだと私は考えます。