2017年に書いたこの記事を、最近あらためて読み返していました。
当時の私は、身体に起きていることを理解したい一心で、新しいアプローチに強く惹かれていた時期でした。
2017年3月15日執筆、2026年4月21日アップデート
いま読むと、間違っていたわけではないけれど、見えている風景はずいぶん違っていたように感じます。
コロナの前の社会実験、そしてアフターコロナの日常。その渦のような数年間。その変化も含めて、ここに残しておきます。
SE(ソマティック・エクスペリエンス)の講習に出てきました。SEとは、アメリカのピーター・リヴァイン博士によって体系化された、トラウマに対するセラピーであり、身体心理学の手法の一つです。身体感覚に注意を向けることにより、私たちが本来持っている自己治癒力を引き出し、症状の癒しをはかります。
このセラピーは、無理に症状や状態を変えようとするのではなく、クライアントさんの身体が進める自然で本能的なプロセスにしたがう療法です。トラウマに対して効果が高く、また薬などを使わないため副作用が少ないことが特徴です。SEでは、未放出のエネルギーを放出させ、未完了の本能的なプロセスを完了させることを目指します。ロルフィングを提供する中でトラウマ症状も解消していくことが多く、SE的な認識が加わることでセッションの幅が広がりました。ここまでが、2017年の私の理解です。
当時すでに、身体に起きていることへの確かな手応えはありました。一方で、言葉にはならない違和感もどこかに残っていました。それは、すべてを「トラウマと治癒」というレンズで見てしまうことへの感覚です。癒しという文脈はとても重要でありながら、それだけで人の存在を捉えきれるのだろうか、という問いがどこかにありました。
その頃から持っていた場作りや環境への視点。奈良で古民家や隠れ家での夕食会、夜のヨガ会など、いくつかの場所で実験的な場を開いていました。そこでは年齢や肩書きに関係なく、人がただ集まり、それぞれのペースで過ごしていました。
セッションを離れた場では、振り返ると、私は誰かを癒そうとしていたわけではありません。ただ、その場にいる人が無理をせずにいられるように、環境を整えていました。
急かされないこと。否定されないこと。自分のペースを選べること。
結果として何かがほどけていくことはあっても、それを目的にはしていなかったように思います。
環境への意識をそのまま保留にしていましたが、それから時間が経ち、昨年になって「トラウマインフォームドケア(TIC)」という考え方に触れました。これは、トラウマへの理解を前提にしながらも、個人を変えることよりも、環境や関わり方に重心を置く視点です。安全性や信頼、選択の尊重をベースに場を捉えていきます。この視点に出会ったとき、過去に自分がやっていたことの輪郭が、少しはっきりしました。理論として学ぶ前に、「すでに実践として手探りで行っていたことがあったのだ」と思いました。
いまの私は、人を変えることを目的にはしていません。その人が本来のリズムに戻っていくことができるような「場」を整えることに関心があります。身体に起きていることを大切にしながらも、それを個人の中に閉じるのではなく、外の関係性や環境の中で捉えていくことをイメージしています。
ということで、2017年に出会った身体へのアプローチは、いまでは少し違う広がりを持っています。当時の記事を読み返すことは、単なる振り返りではなく、いま立っている場所を確かめる作業でもありました。身体からはじまった関心は、いつの間にか「場」へと移ってきています。これからも、その両方を行き来しながら、丁寧に見ていきたいと思います。
── 句読点を打ち、場を調える。
いつの間にか過ぎ去ろうとする3月を、言葉で手繰り寄せます。いくつもの役割に区切りをつけ、私は今、より純度の高い「個」の場所へと立ち戻ろうとしています。
国立天文台を退任する
星々を見上げる広大な視座を共有した場所に暫く滞在していましたが、任期満了に伴い、静かに籍を移しました。組織という大きな物語の一部であった時間を終え、再び自分の足元にある地面、そして身体という最小単位の宇宙へと帰還しました。それは終わりではなく、新しい観察の始まりとしての「句読点」でした。地球にグラウンディングして、天球という全体を俯瞰(オブザーブ)する。それが私の原点だったのだという気づきを得ました。
展示される言葉、晒されるという感覚
俳句という型に流し込んだ自分の欠片を、公の場に晒す。渋谷現代俳句での佳作受賞と授賞式出席を経て、自らの作品が誰かの視線に触れる瞬間に生じる、奇妙な解放感を味わいました。伝えたい何かが先にあるのではなく、言葉を外側に置くことで、初めて自分という輪郭が逆説的に浮かび上がる。今はその「晒す」という身体感覚を、静かに愉しんでいます。
サイトを編み直し、場が動き出す
自らの拠り所であるデジタルな空間を、今の自分に合わせて整え直す。オウンドサイトのデザインという表層を編み直した途端、そこに流れる気流が変わり、訪れる人々が三倍に増えるという現象が起きました。内面を言語化し、器を整えることは、図らずも他者との新しい共鳴を引き起こす。場を整えることの、静かな威力を実感しています。
外部のメディアにも少し表現の場を広げていこうと、想いを巡らせた3月でした。
